■ 「11b」の後継規格、「11g」

 2003年に策定された「11g」は、「11b」の後継となる規格で、信号変調方式に「11a」と同じ「OFDM」を採用し、「54Mbps」の通信速度を実現しています。

■ 2.4GHz帯と5GHz帯を統合した「11n」

 2009年に登場した「11n」では、「2.4GHz帯」と「5GHz帯」を統合的に扱うことが可能で、最大伝送速度「600Mbps」、実効速度で「100Mbps以上」にまで高速化しました。
 「11n」では、チャンネルあたり「20MHz」の帯域幅を2チャンネル結合することで、倍の通信速度を実現する「チャネル・ボンディング」という技術が採用されています。また、送受信を複数同時に行なえる「MIMO」(Multiple Input Multiple Output)も利用することが可能です。
 符号化の効率も向上しており、単一チャンネルで「72.2Mbps」の通信速度、「チャネル・ボンディング」利用時(帯域幅40MHz)で「150Mbps」、さらに「MIMO」を利用することで最大「450Mbps」(3チャンネル同時送信/3チャンネル受信)の高速通信が可能です。

■ 最大6.9Gbpsの「11ac」

 2014年に登場した最新の「11ac」では、利用する周波数帯域を「5GHz帯」のみとして、チャンネルあたりの帯域幅を、「80MHz」と4倍に広げました。「チャネル・ボンディング」利用時には、帯域幅「160MHz」となり、チャンネルあたり「866.7Mbps」で通信することが可能です。
 「MIMO」をマルチユーザー化した「MU-MIMO」も盛り込まれており、通信時に電波の指向性をコントロールする「ビーム・フォーミング」という技術を用いることで、複数端末の同時接続時にもスループットが低下しにくくなっています。
 「MU-MIMO」と「チャネル・ボンディング」を併用して、「8チャンネル送信/8チャンネル受信」にすることで、最大で「6.9Gbps」のギガビット無線通信を実現します(ただし、親機の最大通信速度。端末あたりは4×4のMIMOまで)。

各規格の違いと特徴

 これまで、見てきた「IEEE 802.11」シリーズの仕様を以下の表にまとめます。

規格名策定日変調方式周波数帯公称通信速度同時通信数(MIMO)チャンネル幅(帯域幅)備考
IEEE 802.111997年6月DSSS2.4 - 2.5GHz2Mbps122MHz免許不要
IEEE 802.11b1999年10月DSSS/CCK2.4 - 2.5GHz11Mbps/22Mbps122MHz免許不要
IEEE 802.11a1999年10月OFDM5.15 - 5.35GHz
5.47 - 5.725GHz
54Mbps120MHz5.15 - 5.35GHz: 屋内の利用に限り免許不要
5.47 - 5.725GHz: 屋内外に限らず免許不要
IEEE 802.11g2003年6月OFDM2.4 - 2.5GHz54Mbps120MHz免許不要
IEEE 802.11n2009年9月OFDM2.4 - 2.5GHz
5.15 - 5.35GHz
5.47 - 5.725GHz
65Mbps~600Mbps1 ~ 420/40MHz2.4GHz帯: 屋内外に限らず免許不要
5.15 - 5.35GHz: 屋内の利用に限り免許不要
5.47 - 5.725GHz: 屋内外に限らず免許不要
IEEE 802.11ac2014年1月OFDM5.15 - 5.35GHz
5.47 - 5.725GHz
292.5Mbps~6.93Gbps1 ~ 480/160MHz5.15 - 5.35GHz: 屋内の利用に限り免許不要
5.47 - 5.725GHz: 屋内外に限らず免許不要
IEEE 802.11ad2013年1月シングルキャリア/
OFDM
57 - 66GHz4.6Gbps~6.8Gbps1最大9GHz免許不要

 使用する電波は、「2.4GHz帯」と「5GHz帯」の2つの周波数帯域です。

 一般に無線通信は、周波数が高ければ高いほど高速に転送することができます。
 その一方で、周波数が高くなると、壁などの遮蔽物に弱くなります。実際、「2.4GHz帯」に比べて、「5GHz帯」は電波の回り込みが弱く、部屋などをまたいでしまうと、通信速度がガックリと落ち込んでしまうケースが多くあります。
 「5GHz帯」のみを用いる「11ac」では、この問題を、複数チャンネルによる同時接続、すなわち「MIMO技術」と、「ビームフォーミング」によってある程度克服する設計になっています。

 また、前節では触れませんでしたが、表のいちばん下に挙げた「11ad」は、57 – 66GHzもの高い周波数で動作する「Wi-Fi」の変わり種です。
 「50GHz」以上の周波数では、遮蔽物を回り込んでの伝送はほぼ不可能であるため、複数のアンテナを配置して、積極的なビームフォーミングを行なうことで、問題を回避しようとしています。

 「11ad」の目的は最大「7Gbps」の通信速度を確保することで、HDディスプレイなどの非圧縮信号をワイヤレスで伝達することです。
 現時点では、「2.4GHz帯」と「5GHz帯」の両方を利用できる「11n」が、もっとも使い勝手がよい規格だと言えるでしょう。

 最近の「Wi-Fi」端末は、意識しなくても自動で最適な「IEEE 802.11」規格を選んで通信してくれるので、「チャネルボンディング」や「MIMO」の動作をいちいちユーザーが意識することはほとんどありません。
 しかし、最新のスマートフォンなどは多くが「11ac」に対応しているため、自宅の「Wi-Fi」ルータをここ数年更新していないといった方は、最新のものを導入することで、はるかに快適なネットワーク環境が得られるでしょう。


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